【暴力団犯罪の手口】薬物・傷害・詐欺・窃盗の実態
暴力団犯罪の特徴は、従来型の暴力事件と資金獲得を目的とする経済犯罪が並行していることだ。
警察庁の2025年統計では、覚醒剤取締法違反が1,478人で最多となり、傷害938人、詐欺875人、窃盗617人と続いた。
それぞれの犯罪には、組織の維持や収益確保という背景がある。
1.覚醒剤・大麻などの薬物犯罪
薬物犯罪は、暴力団の代表的な資金獲得活動の一つだ。
警察庁の調査では、2025年の薬物密売関連事犯の検挙人員のうち、暴力団構成員等は259人で、全体の29.1%を占めた。
さらに、覚醒剤密売関連事犯の検挙人員に限ると、暴力団構成員等の割合は43.6%に達している。
薬物密売が暴力団の資金源として依然大きな位置を占めていることが分かる。
一方、大麻をめぐる状況も深刻だ。2025年の薬物事犯全体の検挙人員は1万4,574人で、大麻事犯は6,832人と過去最多を記録した。これは暴力団員だけの数字ではなく、社会全体の薬物犯罪統計である点に注意したい。
麻薬取締法違反で暴力団構成員等の検挙が530人に増加した背景には、2024年12月12日の法改正によって大麻・THCの規制上の位置付けが変更された影響もある。前年との単純比較だけで、薬物犯罪の実態が急激に変化したと判断することはできない。
2.傷害・暴行・恐喝などの暴力犯罪
暴力団事件で一般市民が直接的な危険にさらされるのが、傷害や暴行、恐喝などの犯罪だ。
2025年の検挙人員は次のとおり。
- 傷害:938人
- 恐喝:385人
- 暴行:331人
- 脅迫:253人
特に傷害は、暴力団犯罪の中でも検挙人員が多い罪種となっている。
背景には、金銭トラブル、組織内の対立、威力を利用した不当要求などがある。
警察庁の2025年資料には、五代目工藤會の組員が警戒区域内の住民に対し、暴力団の威力を示して法定利息を上回る金銭の支払いを要求し、2025年8月に暴力団対策法違反で逮捕された事例も掲載されている。
暴力団事件は、必ずしも銃器を使用するような重大事件だけではない。日常生活の中での威圧や金銭要求も、被害者に深刻な影響を与える。
3.特殊詐欺・給付金詐欺
詐欺は、暴力団の資金獲得活動において存在感を強めている犯罪だ。
警察庁は、2025年の暴力団構成員等の検挙人員に占める詐欺の割合を11.9%と公表した。過去10年にわたり10%前後で推移しており、特殊詐欺などを通じた資金獲得が定着していると分析している。
具体的な検挙事例として、次の事件がある。
六代目山口組傘下組織幹部らによる特殊詐欺事件
- 2024年10月:高齢者に息子などを装って電話をかける。
- 犯行内容:現金が至急必要だと偽り、上司の息子に現金を渡すよう要求する。
- 被害額:合計300万円。
- 2025年5月まで:関係する幹部ら4人を詐欺罪で検挙。
この事件で注目されるのは、実行役だけでなく、暴力団傘下組織の幹部が犯罪に関与していた点だ。
警察庁の統計では、2025年の特殊詐欺検挙人員2,307人のうち、暴力団構成員等は380人。全体の16.5%に相当する。また、主犯として検挙された者のうち、暴力団構成員等が占める割合は37.9%だった。
これは、暴力団が末端の実行役にとどまらず、犯罪の主導的な立場にも関与している実態を示す数字である。
4.窃盗・企業活動を利用した資金獲得
暴力団の資金獲得活動は、直接的な犯罪行為だけではない。
警察庁は、金融業、建設業、労働者派遣業、風俗営業などの事業活動に暴力団が関与する実態を指摘している。
一般企業の経済活動を装うことで、犯罪収益の出所や組織との関係を見えにくくすることが問題となる。
また、2025年の暴力団構成員等に対する組織的犯罪処罰法のマネーロンダリング関連の適用では、犯罪収益等隠匿が58件、犯罪収益等収受が20件だった。
つまり、事件の解明には、犯罪を実行した人物だけでなく、その後の資金の移動や収益の受け取りまで追跡する必要がある。
【2026年最新情勢】六代目山口組と神戸山口組の抗争はどうなった?
暴力団情勢を語るうえで、六代目山口組と神戸山口組の対立抗争は避けて通れない。
2015年8月末の山口組分裂を発端とする対立は、複数の団体を巻き込む状況へと発展した。
神戸山口組からは池田組や絆會が離脱し、六代目山口組との間でそれぞれ対立関係が生じた。
特定抗争指定暴力団等とは?
特定抗争指定暴力団等とは、暴力団対策法に基づき、対立抗争によって市民の生命や身体に重大な危害が及ぶおそれがある場合に、公安委員会が指定する制度だ。
指定された団体の構成員は、定められた警戒区域内で厳しい行動制限を受ける。
主な規制は次のとおり。
- 対立する団体の組員への付きまとい禁止
- 対立組織の事務所や組員の居宅付近での徘徊禁止
- 警戒区域内での事務所の新設禁止
- 抗争を誘発するおそれのある多数での集合の禁止
- 警戒区域内にある指定団体の事務所への立入り禁止
警察庁の2025年資料では、六代目山口組と神戸山口組のほか、六代目山口組と池田組、六代目山口組と絆會の間でも特定抗争指定が行われていた。
2026年9~10月に起きた指定状況の変化
2026年には、抗争の沈静化を理由に一部の指定が解除される一方、神戸山口組との関係では指定が継続された。
具体的には次のような動きがあった。
六代目山口組と池田組
2026年9月7日をもって特定抗争指定の延長が終了した。一定期間、抗争に起因するとみられる事件が発生していないことなどが判断材料となった。
六代目山口組と絆會
2026年9月21日に指定が解除された。兵庫県公安委員会などは、抗争事件が一定期間発生していないことや、幹部への報告徴収の結果などを踏まえて判断した。
六代目山口組と神戸山口組
2026年10月5日、兵庫県公安委員会などによる指定期限の延長が官報で公示された。
延長は27回目で、指定期限は2027年1月6日までとなった。警戒区域では、事務所の使用やおおむね5人以上での集合などが引き続き制限される。
この動きから分かるのは、山口組分裂をめぐる対立が一律に解消されたわけではないということだ。
一部の団体間で指定が解除されても、神戸山口組との対立については警察当局が引き続き警戒を必要としている。
指定解除は、暴力団そのものの解散や壊滅を意味するものではない。地域住民の安全確保という観点から、今後も動向を注視する必要がある。
【匿名・流動型犯罪グループ】暴力団との関係と新しい犯罪構造
2026年の組織犯罪対策で特に重要なのが、匿名・流動型犯罪グループ、通称トクリュウへの対応だ。
トクリュウは、従来の暴力団のように明確な組織名や固定された上下関係を持たず、SNSや求人サイトなどを通じて緩やかにつながる犯罪グループを指す。
警察庁は、2025年の組織犯罪情勢において、暴力団とトクリュウとの関係性を独立した重要テーマとして取り上げている。
暴力団とトクリュウは何が違う?
両者の違いは、組織の構造と人員の結び付きにある。
従来型の暴力団
- 組長を頂点とする階層的な組織構造
- 構成員同士の継続的な関係
- 組織の威力を背景にした資金獲得
- 組織内部の指揮命令系統が存在する
匿名・流動型犯罪グループ
- 中核人物の匿名化
- SNSや求人サイトを通じた人員募集
- 犯罪ごとに実行役や協力者を入れ替える
- 役割を細分化して犯罪の全体像を見えにくくする
トクリュウでは、末端の実行役が犯罪の全容や指示役の身元を知らないケースもある。
そのため、実行犯を検挙しても、犯罪組織の中心人物や収益の流れを解明できるとは限らない。
暴力団とトクリュウはどのようにつながるのか
重要なのは、両者が完全に別々の存在ではないという点だ。
警察庁は、次のような関係を確認している。
1. 暴力団構成員や元構成員がトクリュウの中核人物になる。
2. トクリュウが得た犯罪収益の一部が暴力団に流れる。
3. 暴力団がトクリュウを実質的に傘下に置き、資金獲得活動を担わせる。
4. 海外の外国人犯罪組織との連携にトクリュウが関与する。
また、犯罪に必要な道具やサービスを提供する「道具屋」や、取引相手を仲介する「相対屋」などの存在も指摘されている。
ここで注意したいのは、トクリュウに関与する人すべてが暴力団員というわけではないことだ。暴力団と接点のあるグループもあれば、異なる人脈で活動するグループもある。
トクリュウが関与する犯罪の広がり
警察庁が公表した2025年の状況では、トクリュウによるものとみられる主な資金獲得犯罪の検挙人員は、詐欺が半数近くを占め、薬物、窃盗、風営適正化法違反、強盗などが続いた。
また、主な資金獲得犯罪の検挙人員のうち、20歳代までの若年層が約6割を占めている。SNS上の犯罪実行者募集情報をきっかけに犯行に加担した者も約3割に上る。
つまり、従来の暴力団事件とは異なり、若年層が一時的な実行役として犯罪に巻き込まれる構造が問題となっている。
2026年の警察による新たな対策
警察庁は2025年10月に「匿名・流動型犯罪グループ情報分析室」を設置し、関連情報の集約と分析を進めている。
さらに、2026年4月には「匿流ターゲット取締りチーム(T3)」の体制を200人に倍増した。
警察庁長官は2026年4月2日の記者会見で、中核的人物の検挙と違法なビジネスモデルの解体を重視する方針を説明している。
単に実行役を逮捕するだけでなく、犯罪を指示する人物、資金を管理する人物、海外拠点との関係まで解明することが狙いだ。
暴力団対策は、組織の構成員数を減らす段階から、匿名化された犯罪ネットワークや資金の流れを断つ段階へと重点が移りつつある。
【暴力団対策法・暴排条例】規制の仕組みと社会的影響
暴力団事件を減らすための対策は、警察による逮捕や捜査だけではない。
組織の資金源を断ち、一般社会との関係を遮断するために、暴力団対策法と暴力団排除条例が運用されている。
暴力団対策法の役割
正式名称は「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」。
1991年に制定され、1992年に施行された。
この法律は、指定暴力団員による不当な要求行為などを規制し、市民生活や事業活動の安全を守ることを目的としている。
代表的な仕組みは次のとおりだ。
中止命令
指定暴力団員が暴力的要求行為を行い、相手方の生活や業務の平穏を害している場合、公安委員会がその行為を中止するよう命令できる。
再発防止命令
違反行為を繰り返すおそれがある場合、一定期間、同種の行為を行わないよう命令する制度だ。
特定抗争指定
抗争によって市民の生命や身体に重大な危害が及ぶおそれがある場合、警戒区域を設定し、組員の活動を制限する。
暴力団対策法は、暴力団員による威力を利用した不当要求や、抗争に伴う危険を抑えるための重要な制度となっている。
暴力団排除条例が社会に与えた影響
暴力団排除条例は、地方自治体、警察、事業者、住民が連携して暴力団を社会から排除するための条例だ。
2011年10月までに全都道府県で施行されている。
主な内容は次のとおり。
- 暴力団員への不当な利益供与の禁止
- 公共事業や行政サービスからの暴力団排除
- 不動産取引における暴力団排除措置
- 契約書への暴力団排除条項の導入
- 学校などの周辺における暴力団事務所の開設規制
- 暴力団排除活動を行う住民や事業者への支援
こうした仕組みは、暴力団が一般企業や地域社会を通じて資金を獲得することを難しくする効果がある。
特に企業活動では、取引先の確認や契約時の反社会的勢力排除条項が重要になっている。暴力団との関係を断つことが、企業の信用管理やコンプライアンスの一部として定着した。
暴力団排除の取り組みで注意すべきこと
暴力団排除は、単に関係者を社会から遠ざけるだけでは十分ではない。
組織から離脱した人が正規の仕事に就けず、生活基盤を確保できなければ、再び犯罪組織に関わるリスクが生じる。
そのため、警察や暴力追放運動推進センターなどは、離脱者の社会復帰支援にも取り組んでいる。
また、不当要求や脅迫を受けた事業者が孤立しないよう、相談窓口や保護対策を整えることも欠かせない。
暴力団排除条例の本来の目的は、暴力団員と関係のない一般市民や企業まで萎縮させることではなく、安心して経済活動や日常生活を送れる環境を守ることにある。
【暴力団事件簿】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年現在、暴力団構成員は何人いる?
2026年4月に警察庁が公表した2025年末の統計では、暴力団構成員等は約1万7,600人です。内訳は構成員9,400人、準構成員等8,200人で、1992年の暴力団対策法施行以降で最少となりました。
Q2:暴力団事件で最も多い犯罪は何?
2025年の暴力団構成員等の検挙人員では、覚醒剤取締法違反が1,478人で最多です。続いて傷害938人、詐欺875人、窃盗617人となっています。
Q3:六代目山口組と神戸山口組の抗争は終わった?
2026年10月30日時点では、両団体の特定抗争指定は継続しています。2026年10月5日に指定期限が2027年1月6日まで延長されました。池田組や絆會との指定解除とは区別する必要があります。
まとめ:今後の動向と失敗しないための判断基準
2026年の暴力団事件簿を読み解くと、組織の縮小と犯罪の複雑化が同時に進んでいることが分かる。
警察庁の令和7年統計では、暴力団構成員等は1万7,600人、検挙人員は7,335人となり、いずれも減少した。しかし、薬物密売、傷害、詐欺、窃盗などの犯罪は続いており、犯罪収益の隠匿や企業活動を利用した資金獲得も問題になっている。
さらに、2026年にはトクリュウ対策が強化され、暴力団との人的・経済的なつながりを解明する取り組みが進んでいる。
【プロの結論】事件の件数よりも犯罪ネットワークの実態を見る
暴力団情勢を正しく理解するために、押さえておきたい判断基準は3つある。
第一に、構成員数の減少を安全の証明と考えないこと。
組織の人数が減っても、準構成員や周辺者、匿名の実行役を利用した犯罪は続く可能性がある。
第二に、抗争の沈静化と組織の壊滅を混同しないこと。
六代目山口組と神戸山口組の特定抗争指定が継続しているように、一部の事件が減少しても組織間の対立が解消したとは限らない。
第三に、実行犯だけでなく資金の流れに注目すること。
特殊詐欺や薬物密売、マネーロンダリングなどは、実行役の検挙だけでは組織全体の活動を止められない場合がある。中核人物や資金管理者、犯罪収益の移転経路を解明することが重要だ。
今後の組織犯罪対策では、暴力団の弱体化に加え、トクリュウや海外犯罪組織との連携を断つことが大きな課題となる。
2026年の暴力団事件を理解する最大のポイントは、組織の人数だけではなく、犯罪を支える人脈・資金・ネットワークの変化を追うことにある。 (出典: 暴力団 事件 簿(Yahoo!ニュース))